青夏ダイヤモンド
「新しい生活始まったら、好きな人も新しくなっちゃうもの?」
「俺の場合は会えなかったからが最大の理由だったんですよね。顔ぶれは変わらなかったんで。不安なんですか?中川先輩が別の人好きになるんじゃないかって」
「そう、なのかも。信じてないわけじゃないのに、すごい不安にはなる。ってことは、信じてないのか」
「それって、中川先輩も思うことなんじゃないですかね。だって、自分の見えない環境なんて相手と同等に理解できるわけないですし。お互いの大学の話聞くだけで、きっと嫉妬しますよ」
「翔馬くんって、なんかすごいね。恋愛経験というか、人生経験が私よりも既に豊富そう」
「疑似体験の経験があるんで、それを大学遠距離バージョンに置き換えてるだけですよ」
疑似体験ってどういう意味だろう、と思ったが、無邪気だけではない翔馬くんの言動に感心していると、翔馬くんの携帯がメッセージの受信を伝えたので、そちらに意識が向いた。
「あ、噂の中川先輩からでした」
携帯を見た翔馬くんはそう言いながら返信を打ち込んでいる。
「明日の練習試合の集合時間と場所の連絡でした。今、都さんも一緒です、と」
「え!?打ったの!?」
「打ってたら、困りますか?」
ちら、と翔馬くんは私の様子を伺った。
「なんか、誤解生まないかな、と」
「ですよね。何も無くても中川先輩は勘ぐると思います。こういうことが、遠距離では頻繁に起こるってことです。それを乗り切れないと思うなら辞めた方がいいですよ?」
含みを持たせた笑顔に少し怯えを感じた。
「あ、打ってないですから、安心してください」
いつもの無邪気な笑顔に戻った翔馬くんに安堵感を覚えたものの、ついさっきの含み笑いが頭の片隅に残ったままだった。