青夏ダイヤモンド
10
「ねえ、脩。最近、部活出てるよね?」
今日も野球部のエナメルバッグを斜めがけにしているし、部活に行くと言って放課後は教室を出て行く。
「出てるけど、何で?」
「下校の時、グラウンドの前通るけど、脩の姿見ないから」
「鷹野が見た時に、見える範囲にいないだけだろ?俺のこと、そんなずっと見てんの?」
「通り過ぎる時にちょっと見るだけだけど」
前はもっとすぐに見つけられていた。
グラウンドなんて死角が少ないし、そんな毎回脩の姿が見えないなんてことあるんだろうか。
それに、何だか脩の様子がおかしいと感じる。
夏の大会も近づいて来て、気が立ってるのかもしれないけど、イラついているように見える時がある。
クラスメイトの中にも焦りや苛立ちを感じている人もいるけれど、受験生というプレッシャーも同時にあるから起こることだろうか。
「今年の成南は過去最高って顧問の先生言ってたけど、それって脩がいるからかなー、なんて思って聞いてたよ。練習試合の戦歴も良いって自慢してたよね」
「今年は1年が豊作だったからな」
やっぱり何か変だ。
まぁな、と自信に満ちた言葉が返ってくることを期待したのに。