青夏ダイヤモンド
電車のドアが閉まる直前にドタバタと騒がしく乗り込んで来たのは同じセーラー服を着た女子グループ5人だった。
彼女らは「セーフ」「やばー」とはしゃぎながら賑やかに笑った。
「お、修。めずらしー」
場所を考えることなく、自分達の世界を持ち込み振りかざす、私の苦手な女子達のタイプ。
その女子グループの1人が修に気付いて親しげに話しかけたことに、体が固くなる。
覗き見るように顔を上げると、目が合ったのは充希で、すぐに顔を背けた。
充希が普段仲の良い女子グループだった。
このグループの女子達と一緒にいる時は充希も特に私に話しかけてくることはない。
同じ中学のよしみで充希が私のことを気にしてくれることに負い目を感じてはいたが、構ってくれる彼女に甘え続けている。
だから、こういう時は私も充希と目を合わせず知らない顔をするのが私なりの礼儀。
『駆け込み乗車は危険ですので、おやめください』
「おい、お前ら言われてんぞ」
車掌のアナウンスが流れると、修は上を指さして彼女らに指摘した。
「えー、セーフだったでしょ?修も見てたじゃん」
「駆け込み乗車的にはアウトだろ」
「うそー、厳しいよ、修」
高い声で笑いながら、修の肩を叩く。
「ピッチャーの肩叩くなよ。慰謝料請求すんぞ」
「ひどー。あたし、かなり非力なのにー」
冗談を言い合いながら、媚を売るようにたまに甘い声を出す。