青夏ダイヤモンド
その後、相手チームのランナーを三塁まで走らせてしまって、1アウトの状態。
緊張感の高まる場面だ。
一投目の投球はボール。
二投目に勝負を仕掛けたが、相手チームのバッターはバットを横にして、ボールを当てた。
「やばい、スクイズッ」
「え!?」
バントの構えに入った瞬間、守備陣も一斉に前進、またはカバーに入るためにそれぞれ動き出した。
三塁ランナーは走り出していて、サードはボールを補給して本塁に送球したものの、間に合わず、一点追加となった。
「な、何?なんかあっという間の出来事だった」
「接戦で三塁走者がいて、アウトが少ない状態の今みたいな局面で、使われやすい作戦なの。アウトのリスクはあったんだけど、相手チームもそれだけ練習を積んでるってことだよね。手強いなぁ」
「ねぇ、都って野球経験あるの?」
思わず説明してしまったが、そういえば、充希には話したことがなかったかもしれない。
「小学校の時にやってたんだ」
「そうだったの?だからかー。球技大会でピッチャーできたり野球に詳しかったのは」
「もうすっかり辞めてるけどね」
「そっかぁ。私も勉強すればよかったな。そうしたら、沖田くんのこともっとわかってあげられたかもしれないのに。都はその経験があるから脩の理解者になれるんだろうなぁ」
充希は悔しそうに足をぶらつかせた。
そういう風に自分の野球経験を考えたことはなかった。
脩の理解者になれていたのかな。
私が野球をしていた過去は脩の役に立てたのかな。