青夏ダイヤモンド
同点で迎えた9回表、相手チームの攻撃。
これで点数を渡さなければ、負ける事は無くなり、裏の攻撃で攻めるのみだ。
緊迫感溢れるグラウンドを手を固く組んで祈りながら見つめる。
隣で充希も私と同じように祈りのポーズをとる。
ボールが打たれるたびにヒヤッ、として、ラインを割ったのを見るたびに安堵する。
ボテボテのボールでも何が起こるかわからないから、アウトのコールがあるまでは緊張した。
「もう、やばい。心臓破裂しそうだよぅ」
充希は落ち着かない様子で、震える声を出したが、私はそれに頷くことしかできなかった。
2アウトで二塁に走者がいる状態。
脩は首辺りの汗を手の甲で拭った。
脩が投球フォームに入る。
ボールが放たれると、バッターが体の重心を変えて、バットを振ると、甲高い金属音と共に青空に白球が打ち上がった。
風に乗って運ばれるボールを息を呑んで見守った。
追い風に乗って、今までで1番の飛距離が出ている。
お願い、入らないで。
まだ、脩の最後の試合にしないで。
翔馬くんがボールを追いかけて駆けて行く。
ボールは飛距離を伸ばして行く。
翔馬くんがボールに飛びつこうと、片足を蹴り出した。
「アウトッ!!」
審判の声が響く。
ライトに飛んだボールを翔馬くんが捕球しており、グローブを掲げていた。
いつの間に息を止めていたのか、攻守交代となったことを理解して、安堵の息を吐き出した。
ベンチに帰って来た翔馬くんは良くやった、と迎えられていた。
歩み寄った脩は、翔馬くんの頭をわしゃわしゃと掻き乱して何か声をかけると、翔馬くんは満面の笑みを浮かべた。