青夏ダイヤモンド


「お疲れ様」

試合を終えて出て来た脩を笑顔で迎えると、脩が照れ臭そうに「おー」と手を挙げた。

「橋下は?沖田ともう帰ったの?」

「うん。先に行ったよ」

「俺のこと、待ってたんだ?」

「おめでとう、って早く言いたかったから。4回戦突破おめでとう。準々決勝に行ったのなんて初めてなんだってね」

9回裏の成南の攻撃で1点を返すことごでき、2-1で成南高校が勝利した。

ベスト8まで残ったのは初めてのことだという。

「疲れ溜まってない?肩とか平気?」

「調子良い」

脩は肩を回して余裕の笑みを見せた。

「それに、勝てたのはこれのおかげもある」

ポケットから出したのは、私が作ったお守りだった。

「ずっと、持ってたの?」

「この大会ずっと持ってる」

拙いお守りを大切に持っていてくれていたなんて、嬉しくて涙が出そうになった。

「ちょっといいかな」

脩が持っていたお守りを、脩の手ごと包み込み、目を瞑る。

「もっと脩が長く野球を出来るように、願かけ追加しとくね」

顔を上げると、脩が私の肩に頭を預けた。

「何それ、可愛いんだけど」

耳元に近くて、囁かれるような低い声に心臓が跳ねた。

脩からは見えないだろうけど、すれ違う人が冷やかすような視線を向けてくる。

「脩。人、いるよ」

「だから、これくらいにしとく。誰もいなかったらこれじゃ済んでない」

肩から離れた脩の顔を見上げると、私の顔も更に熱くなった。


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