青夏ダイヤモンド
2人が階段を下り、玄関のドアが開閉される音がした後、部屋に残された私達の間には突然静寂が訪れた。
「沖田くん、脩のこと大好きだねー」
ノートの内容も入って来なくなってしまったので、わざと明るい声で笑うと、脩は何か考える様子を見せた後に私のことを伺うようにゆっくりとした口調で訊ねる。
「寂しい、とか思う?」
聞き返されるとは思わなかった。
脩のことを思えば、寂しくないからやりたいことをやってね、と背中を押してあげるのが良い彼女なのだろう。
「私は、大丈夫だから」
「大丈夫って顔じゃない」
「じゃあ、どうすればいいの。・・・大丈夫、って言わないと脩が困るでしょ」
「俺のこと気にして自分の気持ちを抑えてるのなんてわかってる。鷹野が言ってこないから、こういう話を避ける口実を俺が作ってただけだ。ちゃんと、鷹野の気持ち聞かなきゃならないのに」
どうして私は隠したいことも隠しておけないんだろう。
結局は脩に気を遣わせることになってしまっている。
「・・・寂しいよ。本当は、脩に行ってほしくない」
ぽつん、と私の震えた声が漏れる。