青夏ダイヤモンド
ファミレスで勉強をしていた私と脩はいつものように、特に言葉を発するわけでもなく、それぞれ集中したい科目を勉強していた。
「何か飲む?ついでに持ってくるけど」
空になっているコップを脩が指差し、自分は既に立ち上がろうとしている。
「あ、じゃあ、オレンジ」
「了解」
勉強はそれぞれだけど、こうして気が向いた時に話しかけたりできる距離を保っていられることが嬉しくて、一緒に時間を過ごせるだけでかけがえのないことに思えた。
もうすぐ、一緒にいることすらできなくなってしまうのだから。
突然テーブルが続けて振動する。
テーブルに置いていた脩の携帯にメッセージが届いたようで、ふとその画面が視界に入ってしまった。
ひとみ、という相手からのメッセージだった。
見てしまったその名前が気になってしまい、メッセージにまで視線を移してしまった。
教えてもらった過去問集、良かったよ。ありがとう。
それとスタンプが送られてきたようだった。
内容からはどこの誰なのかはわからなかったし、ひとみ、という名前にも心当たりはなかった。
交友関係が狭い私の記憶の中だから、今まで会ったことはあるのかもしれないけど、頭の中でその名前が何度も現れる。