青夏ダイヤモンド



「どーぞ」

「ひゃっ!?」

オレンジ色の液体が入ったコップが突然目の前に置かれると、反射的に悲鳴を上げてしまった。

当然だが、脩は首を傾げていた。

「え、何?オレンジで良かったよな?」

「う、うん。ありがとう」

慌ててジュースを飲み始めた行動は、いささか不自然に思われたかもしれない、と思いつつ脩の様子を伺うと、脩は携帯で何かを打ち込んでいた。

もしかして、ひとみ、という人への返信だろうか。

そもそも、私はどうしてこんなに気にしているのだろう。

内容から、脩がその人におすすめの過去問集を教えただけだ。

こんなことで、いちいち不安になっていてどうするんだろう。

「そんなに喉、乾いてた?」

考え事をしていたせいで、オレンジジュースを一気飲みしてしまっていたらしい。

「おかわり持ってくる?」

「自分で行って来るから大丈夫」

挙動不審な私に気づかないでほしい、と願いながら逃げるようにドリンクバーに向かい、オレンジジュースを再び入れて、少し落ち着いてから脩のもとに戻った。



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