青夏ダイヤモンド
「不安な気持ちを正直に話すのがいいんじゃないかなぁ」
「そう、なのかな」
脩にはすぐに私の不安を勘付かれてしまうのだけど、それをあえて言うのは憚れた。
「距離が離れてるなら尚更。今なら顔見れば察することができるかもしれないけど、顔見れなくなったらわからないし、言うしかないかなって」
充希は自分の足元に視線を落とし、ぽつりと言葉をこぼす。
「私ね、本当はみんなと離れるのが怖いんだ」
膝に置いた拳を強く握っている。
「地元には残るけど大学が違ったら、今みたいには会えない。きっと、それぞれに友達もできると思うし」
充希がそんな風に不安を感じていたなんて全く知らなかった。
「脩と都はもっと離れるのに、私が不安になるなんておかしいんだけど、今の4人がすごく心地よかった。だから、大学に行ってもそんな人間関係が作れるのかすごい不安」
距離なんて関係無く、今が心地よければ良いほどまだ見ぬ先に恐怖を感じてしまうのかもしれない。
「充希がそう思ってたの、気づかなかった」
「でしょ?」
充希は顔を上げて小さく笑う。
「でも、充希がそう言ってくれたから私も安心できる。自分だけじゃないんだ、って。不安に思わなくても、ずっと友達だよ、って」
「うん。言わないとわからないことってあるよね」
「そう、だね」
脩とは距離も離れてしまうから、お別れの気持ちが強かったけれど、それは充希や沖田くんとも同じように別れるということ。
こうやって、充希と電車に乗ることもなくなってしまうのだろう。
そう思うと、なにもかもかけがえのないものに思えてくる。