青夏ダイヤモンド


「こっち向けよ」

「やだよ」

小さく笑う声がして、まだ笑ってるのかと思い、眉根を寄せる。

「鷹野が妬いたの、俺すげぇ嬉しいんだけど」

「う、嬉しいの?」

何を言っているのかと訝しげに見上げると、脩が口元に笑みを浮かべてこちらを向いていた。

「こっち見た」

反射的に顔を背けようとすると、頬に触れた
手によってそれを阻止された。

「俺は、鷹野しか見てない。鷹野も俺だけ見て」

心臓が大きく跳ね上がり、鼓動が早鐘を打つ。

見つめられると、指先まで硬直してしまっていた。

「見てるよ・・・」

なんで涙が出るのかわからなかった。

今の気持ちを全て言葉にできないことにもどかしさを感じた。

「もうずっと、脩しか見てない」

脩が好き。

好きよりも好き、ってどう言い表せば伝わるの。

「泣くなよ」

困ったように親指で優しく脩が涙を拭ってくれるけど、後からまた溢れてくる。



< 231 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop