青夏ダイヤモンド
「渋いね」
「か、勝手に見ないでよっ」
「落ちてたから。誰のかと思って開いただけだろ」
ここに落ちていたら私の物だと予想できそうなものなのに。
彼の態度に腹も立ったが、見方を変えれば一応拾ってくれた人。
礼を言うべきかもしれないと思って、だけど言いたくなくて、結局無視する形になってしまった。
「見られたくない本、公共の場で読むなよ」
自然とこれで終わりになるかと思ったのに、追い討ちをかけてくる彼への怒りが再燃した。
「そんなの、私の勝手でしょ!?」
「勝手だよ。あんたがキレてくるからこっちだってムカついたんだよ」
「こっちだって、ムカついたのよ!」
思わず立ち上がると、周りの視線が一気に集まったことに気づき、すとん、とそのまま席に座り直した。