青夏ダイヤモンド


結局、沖田君が強引に名前を書いていく。

中には嫌そうな声を出す生徒もいたが、沖田君がうまくなだめながら、最終的には頷いてくれる。

この人は、ただ賑やかにはしゃいでいるだけじゃなくて、その雰囲気で人に嫌な思いをさせずに着実に物事を進められる人なのか、と見直していたところに、突然私の名前が挙がる。

「野球は、鷹野とー」

「え、ちょっと待って。野球は勘弁してよ」

「なーに言ってんだよ。鷹野、なんも入ってないじゃん」

「うん、ごめん。だから、誰かと変えてほしい」

ごね始めた私に白い目が集まり出す。

みんな嫌でもやってるんだから、お前もやれよ、といくつもの目が訴えている。

「じゃあ、野球やってくれる人いる?」

沖田君が周りを見回すも、率先して手を挙げる人はいない。

バレーやバスケはやったことがあっても野球をやったことがある人は少ないんじゃないだろうか。

一度落ち着いた自分の役割と完全未経験の野球を代わってもいいと立候補するような人はこのクラスにはいなさそうだ。



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