青夏ダイヤモンド
3
それからの体育の授業は球技大会の練習として当てられた。
室内競技は体育館で。
野球だけは外での練習だった。
私は体育倉庫に眠っていた多少埃っぽいグローブを左手に着けて、脩と向き合う。
「とりあえず普通に投げてみろよ」
しゃがんでミットを胸の前に構えた脩が偉そうに命令する。
私は何にも意識せずに右手を大きく振り、脩に向かってボールを投げた。
・・・はずだったのに、ボールは脩の頭上に向かって行った。
脩が素早く反応してボールを取ったから良かったものの、酷い大暴騰だ。
「ノーコン」
「う、うるさい。嫌だっていったのに」
「けど、距離は届いてる」
用意していたグローブに吸い込まれるように入ってきたボールは思いのほか重く、掌が痺れた。