青夏ダイヤモンド
「もう少し、優しく投げてよ」
「か弱いフリかよ。さっきの女子投げも寒気するぞ」
「はぁ?女子なんだから仕方ないでしょ」
「いいから、早く投げろよ。時間無いんだって」
横柄な態度に腹が立ってきた。
「俺にぶつけるつもりで来いよ」
言われなくてもそうするつもりだ。
怒りに任せて大きく振りかぶり、右腕をしならせながら、左足を大きく前に踏み出した。
バシッ、という乾いた音が脩の構えたミットから漏れる。
周りでキャッチボールをしていたクラスメイトが目を丸めて固まっていた。
ドン引きされていることに気づいて、顔が一気に熱くなる。
「や、べぇ。何今の」
「鷹野って野球やってたの?」
「俺ら実は勝てるんじゃね?」
聞こえてくるざわめきはどうやら賞賛の意味が込められているようだったけど、自分がしでかした事に酷く後悔をしていて喜んでいる余裕はなかった。
「マジで俺のこと殺しにきただろ」
脩はそう言いつつも楽しそうに笑いながらボールを山なりに返して来た。