青夏ダイヤモンド
優秀な成績を持たない部活ばかりを保有する成南高校にとって、野球部はそこそこの成績を毎年残している部活ではあった。
学校側も野球部に力を入れてはいるものの、金銭面では私立高校には敵わないし、優秀な選手を得られる程の戦歴でもない。
甲子園出場経験があるという、嘘か本当かわからない経歴を持った教師が指導しているが、甲子園にかすったことなどない。
ベンチに入っていただけだという噂もあるから、県大会に常に行けるのは、十分好成績なのかもしれない。
朝の出来事を思い返し、もう少し大人な返し方があっただろうと授業の合間に言葉を考えていると、あっという間にチャイムが鳴っていた。
「みーやこたん?」
猫撫で声で私に擦り寄って来るのは、お願いの前触れ。
すかさず数学のノートを差し出すと、充希は私の肩に絡ませた腕を一層巻きつけた。
「えー、何でわかったのー?もしかして都ってエスパー?」
「隣であんなにスヤスヤ眠っててノートとってたら、それこそエスパー」
「都のノート見た方が頭に入るんだよねー。教師になった方がいいよ、都」
「無理無理ー。寝てる生徒見ても知らないふりして授業続ける精神力ないもん」
「地味に私のことディスってるしー」