青夏ダイヤモンド
思わず手を引っ込めると、振り返った脩に睨まれた。
「や、やだ・・・」
「はぁ?危ねぇから、ちゃんと捕まっとけよ。振り落とされるぞ」
「だ、だって、私、汗かいてるし」
「だから何だよ?俺だってかいたよ」
な、何でわからないの。
「く、臭いかもしれないじゃん!!」
何でここまで言わないとわからないんだ。
恥ずかし過ぎる。
思いのほか、大声も出てしまったし。
顔を上げられないでいると、頭の上に気配を感じた。
「シャンプーの匂いしかしない」
勢い良く顔を上げると、鈍い音と同時に呻き声が聞こえ、脩が顎を押さえて声にならない声を漏らしていた。
「いきなり、動くな・・・」
「に、匂い嗅いだの!?」
「お前が臭いとか言うから確認してやったんだろ」
「さ、最低!何でそんなことすんのよ!デリカシーってもんがあんたには無いの!?」
「はぁ!?臭くねぇって言ってんだろ!」
「匂い嗅ぐ行為自体がデリカシー無いって言ってるの!」
荷台から降りて歩き出すと、脩が「おいっ!」と叫んだけどその後すぐに「勝手にしろ」と怒りの声が聞こえたと共に自転車を漕ぐ音が遠ざかっていくのを後ろで聞いた。