青夏ダイヤモンド
自分が浮いていることの自覚は初めからあった。
でも、何がそうさせるのかは分からない上に、自分からも何か変えようと動きもしなかった。
当然、自然と作られる女子のグループからもあぶれることになった。
一緒に帰ろう、と誘ってくれるのは充希くらいなものだ。
「今度は何の本?」
鞄からチラリと見えた文庫本を充希は指さした。
「司馬遼太郎。燃えよ剣っていう、新撰組の話」
「時代劇?かっこよさそうだね」
「うん。かっこいいよ」
本に全く興味が無くても、充希は一生懸命に話を合わせてくれる。
私は充希の優しさに甘えて、自分が好きなものをズレていると自覚しながらも正直に答える。
普通の女子高生なら、せめてドキドキするような恋愛小説の名前を出して、その後もはしゃぐはずだ。
それでも中学時代はたくさん嘘をついて好きなものを偽ったりもした。
だけど、人に合わせることばかりしていて疲れてしまった。
本当の自分を見失った気がした。
自分の事を自分が認めないなら、誰が私の存在を認識してくれるというのだろう。