青夏ダイヤモンド


本当は、ただ、どうしていいか自分でもわからなかっただけだ。

頭に触れるか触れないかの距離で脩の顔があって、脩の息づかいを感じた時に、自分でも驚く程に胸が苦しくなった。

せっかく、脩が親切に送ってくれようとしたのに、私はお礼どころかデリカシーが無いなんて言ってしまった。

いや、でも、確認するためって言っても匂いを嗅ぐ?

脩って天然なんだろうか。

きっと、脩は本気で何とも思っていなかった。

私が匂いを気にしたから脩は単純に事実を述べただけなんだ。


シャンプーの匂いしかしない。


頭に響く低い声に心乱されそうになる。

髪を1束掴んで鼻につける。

シャンプーの匂い、するかなぁ・・・。


頬にポツリ、と雫が落ちて来たと感じた時には、もう次から次へと雨が降って来て、すぐにバケツをひっくり返したような土砂降りに変わった。

慌てて走り出すも、すぐに髪もシャツも靴も濡れてしまった。

こんなことなら、大人しく脩に乗せてもらっていれば良かった。

そんな事を考えながら走っていると、前から来た車に思い切り水をかけられた。

車に水をかけられたってずぶ濡れなことには変わらなかったけど、途端に自分がひどく惨めに思えた。

変な色気を出して脩には酷いことを言ってしまったし、変な自意識でこそこそと違う土地に来て、この有様。

ああ、やばい。涙出そう。


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