青夏ダイヤモンド
「何やってんだよ!」
雨の音に混じってキッ、と金属音が横で響く。
「乗れ」
「しゅ、う・・・」
「つべこべ言ったら落とす」
私の腕を力強く引いて荷台に促し、座らせられる。
びしょ濡れになったシャツが張り付く脩の腰にギュッと腕を回して顔を埋めた。
「・・・なんで」
「あぁ!?」
雨の音で私の声はかき消されたけれど、脩は私がまた何か文句を言ったと思ったらしい。
私は脩に何もしてあげてはいないのに、脩は私に無条件に優しくしてくれる。
脩の家は多分駅と反対側。
それなのに、引き返して私の事を見つけてくれて、今も激しい雨に打たれながら自転車のペダルを懸命に漕いでいる。
脩が人気者だとか、エースだとか、綺麗なフォームだとか、私の持っていないものばかりを持っていて、嫉妬ばかりしている自分は何なのだ。
小さい小さい人間だ。
私が脩にしてあげられることって何なんだろうか。
何でもできる脩に何にもできない私ができることって。