青夏ダイヤモンド
1人目は内野ゴロになり、沖田くんとファーストが確実に処理してくれた。
2人目も1ストライク。
時間が進むにつれて強くなってきた太陽の鋭さに額から流れてくる汗を拭う。
脩のサインは高めのボールを要求している。
一度ボールで様子を見るようだ。
何回目かの振り被り、そしてボールが手を離れる感覚。
あ、まずい。
何度も繰り返した感覚と明らかに違った。
汗のせいか、ボールがすっぽ抜けた感覚。
高さは思った通りだったものの、あまりにインに入りすぎた。
救急箱持って来て!
切ったらしいな。
一応担架にしよう。
突然脳裏に悲鳴や大人達の慌ただしい声がいくつも重なって繰り返された。
呆然とその様子を見ているだけの私も見える。
でも、今の私ではなくて、もっと小さい頃、そう、小学生の私がだらりと腕をたらして立ち竦んでいる。
バッターボックスにいた少年は担架に横たえられながら運ばれる際に、血が流れる顔をこちらに向けて、ひどく責めた目が私を捉えた。
その目は何故か、私が遠くから見ていた小学生の私に向けられているものではなく、私自身に向けられているような気がした。