青夏ダイヤモンド
5
球技大会で団結したのかしてないのか、特進クラスはそんなことを実感する間もなくテスト期間を迎え、誰もがライバルかのようにピリピリした雰囲気が漂っている。
充希の依頼を受けて、ファミレスで勉強を教えることになった。
教えることは嫌いではないし、人に説明することによって自分の理解を深められるから、引き受けた。
ファミレスに行くと、同じような生徒があちこちにいて、混み合っていた。
この辺りに学生がリーズナブルに使用できて勉強できるスペースのある店が少ないせいで、どうしてもテスト期間は混み合ってしまう。
どうしようかと入り口で逡巡していると、私と充希のことを呼ぶ声が店内から聞こえた。
覗くと、沖田くんがボックス席で手を振っていた。
「助かったよ。2人も勉強に来てたんだね」
4人席だったので、脩と沖田くんに奥に詰めてもらうことで私と充希も向かい合って座ることができた。
「俺の成績は脩の腕にかかってるからねー」
「いい加減、自分の力で乗り越えてもらいたいもんだけどな」
「まぁ、こう言っておりますが、毎回付き合ってくれるんですねー」
「口動かしてねぇで、それ解けって。2問間違えたら明日も駅まで送れよ」
「さっきより厳しくなってるし!」
「1問でもいいんだけどな」
「やります!」
沖田くんは慌てて目の前の問題に向き合い始め、脩はイヤホンを耳に付けて英語の参考書を開いた。
4人席ではあるものの、肩幅のある脩が隣にいるせいか少し窮屈で、脩が座る左側が何となく落ち着かない。
充希がわからないところを説明し、充希が解いている間は自分の問題集に取り組むものの、いつものペースで解けない。
飲み物に手を伸ばすと、別の手に触れた。
「それ、俺の」
「ご、ごめん」
慌てて手を引っ込め、小さく息を吐く。
何してんだ、私は。