青夏ダイヤモンド
席に戻ろうとすると、私と充希が座っていた場所に同じ制服を着た女子が座っていた。
「話題の人が早速登場だよ」
「どうしよ。私、まだ美穂達とは気まずいんだけど」
谷下さん達は賑やかに脩と沖田くんと話をしているようだった。
私達が立っている場所からは沖田くんと谷下さんの友達の表情しか見えないけれど、脩が座っている方の席には谷下さんが脩に密着するように座っているようだった。
谷下さんの友達が私達に気がつくと、向かいに座っている谷下さんに顎で後ろを示した。
振り向いた谷下さんは眉根を寄せて私達を威嚇しているようだ。
荷物がある以上、このまま帰る選択肢は無く、席に近づくと谷下さんが今、気付いたかのように「おかえりー」と笑顔で手を振った。
「久しぶりだね、充希。特進クラスは楽しい?」
私達にしか見えていないことをいいことに、声だけ明るくして目は私達を睨みつけている。
「楽しいよ」
「テスト勉強中なんだって?今度、私達にも教えてよ。充希と違って、私達バカだからさー」
ケラケラ笑う声が勘に触る。
自分達をバカと貶しながらも、充希と違って、とわざとらしく強調することによって圧力を感じた。
谷下さんは目で出口を示し、間違いでなければ口パクで「帰れ」と言った。