青夏ダイヤモンド
「ねえ、カンニングのこと充希に確認した?」
「え?」
「本人に確認して、やってない、って言われた?」
「確認なんてしてないよ。やるわけない」
谷下さんは横の友達に目配せし、クスクス笑ってから私に向き直る。
「あんた、1年の時、充希と同じクラスだったでしょ?」
「そうだよ」
「だったら疑わない?充希の成績で特進に行けるなんて、思った?」
充希は特別成績が良かったわけではなかったが、それでも特進クラスがあり得ないほどでもなかったと思う。
特進クラスに入るためには希望者が年末のテストで及第点を取れば入れるから、それまでの成績はあまり影響しないので猛勉強していれば、いきなり特進クラスに入れる可能性もある。
「カンニングでもしない限り、無理だって思わない?」
「思わないよ」
何を揺らいでいるのか。
この口ぶりで言えば、谷下さんは充希がカンニングしたと確信して言っているわけではない。
ただ、私に不信感を与えたいだけだ。
谷下さんはますます眉根を寄せて舌打ちする。
「お前、ウザいよ」
谷下さんは私の肩を強く小突いて、教室を出て行った。