憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

☆☆☆

こうして、あたし達は由梨が見つけた自称日本最強の霊能力者に会いに行くことになった。


由梨が昨日見たのはオカルト専用のブログだった。そこには自称最強が運営しているという霊能事務所の地図が載せてあった。


地図を頼りに歩いていくと、表通りから少し離れた場所にその事務所はあった。大きな門があって、レンガでできたかなり立派な建物だ。


「サディスティックカイトの…」


「サディスティック霊能事務所……」


門にあった表札には、妙におしゃれな字でそう書いてあった。どうやら自称日本最強の霊能力者は『サディスティックカイト』と言うらしい。


「…………」

「…………」

「…………」


あたし達は色々な意味で言葉を失った。そして多分、三人とも来たことを後悔した。


「ここ、繁華街によくある危ない店すよね?」


英美がポツリと呟く。


「そ、そんなはずは……地図によると、ここで間違いないはずよ。それにほら、一応、霊能事務所って…」


「でもサディスティックって…」


「一応、霊能事務所って書いてあるわ!」


由梨が英美を遮って言った。


「どうする? 入ってみる? それとも帰る?」


正直、あたしは帰りたい。


「……ここまで来たんだし、入ってみましょうよ。……何かあったらすぐ帰ればいいわ」


そう言い、由梨は門にあるインターホンを鳴らした。


ピンポ~ン!


「あれ?」


ピンポンピンポ~ン!


何度か鳴らしたけど反応がなかった。「変ね。留守かしら?」と由梨が不思議がる。


あたしが門に触れると、門が少しだけ開いた。


「鍵空いてるね。勝手に入っていいってことかな?」


「とりあえず、事務所の中まで行ってみますか。誰かいるかもしれませんし」


「うん、そうだね」
< 119 / 257 >

この作品をシェア

pagetop