憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
あたし達は門を抜け玄関に向かった。それから西洋風の大きな玄関の扉を開き、
「あの~、お邪魔します。誰かいませんか?」
あたし達は建物の中を覗いた。
「…………」
……返事はない。
建物の中は外から見るよりずっと広い。赤い絨毯が敷かれていて、壁には絵画、天井にはシャンデリアまであった。
まるでヨーロッパの貴族が住む洋館のようだ。今にもタキシードを着た執事が「ようこそいらっしゃいました」とか言って、上品に出迎えに来てもよさそうなくらいだ。
「あの、すいませーん!!」
今度は少しボリュームを上げて声をかけた。だけど、また返事はない。
「やっぱり、留守なんすかね?」
困ったあたし達が玄関でキョロキョロしていると、
「うっ、ひくっ、ううっ……」
どこからか、若い女の人がむせび泣く声が聞こえてきた。
「この声……建物の中からっすね」
「行ってみましょ!」
あたし達はその声を頼りに建物の奥へと進んだ。するとある部屋の扉から何人かの話し声が聞こえてきた。
「お願いします!! カイトさんは日本最強の霊能力者だって聞きました!!
どうか親友の里奈を……里奈を助けてください!!」
扉から女の子の必死な声がした。
「今、霊能力者って聞こえなかった!?」
あたしは二人に言った。
「間違いないわね。この部屋の中にいるのよ……日本最強の霊能力者が」