憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

「なに、するんですか……?」


里奈の友達が唖然とした顔で呟いた。あたし達もあっけに取られ、その場に立ち尽くす。するとカイトさんは、


「俺に、嘘つけると思ってんの?」


と冷たい声で右頬を真っ赤にした里奈に言った。里奈は頬を押さえ上目遣いでカイトさんを見つめる。


「う、嘘って、私達、何も……」


明らかに動揺した声で里奈は言った。そんな里奈にカイトさんはこう続けた。


「猫を殺したの、本当は里奈ちゃんだよな?」


「っ…!!!!」


その言葉に、里奈は血が抜かれたような青い顔をした。唇を震わせ、言葉を詰まらせる。


「悪いけど、里奈ちゃんの頭を少し覗かせてもらったよ。

……里奈ちゃん、二週間前、合コンで知り合った男子達と飲酒したんだろ。隣の恵理香ちゃんも、一緒にいたはずだぜ」


カイトさんは里奈の友達に目配せした。この子の名前、恵理香って言うんだ。


恵理香は下を向いたまま、落ち着かない様子で足をブルブルと揺すった。


「頭を覗いたって…? マジなんすかね…?」


英美は小さな声で言った。


「分からないけれど……でも二人の様子からして、図星って感じよ」と由梨が答えた。


「じゃあ、本当に…?」


不思議に思いながら、あたし達はカイトさんと里奈を見つめる。カイトさんはまた話を続けた。


「合コンの帰り道、街灯がちらつく空き地で、おまえらは猫の親子を見つけた。酒がまわってハイになっていた男子達は、ふざけて親猫の方を捕まえて、木の棒でなぶり殺しにした。まったく、ふざけた連中だ。その場が盛り上がれば、何をしても万事オーケーなんだろ? ……そんで残ったのは、一匹の子猫だ。覚えてるか? 目の前で母親を殺されて、完全に怯えきってたな。

……そんな子猫をみんなで囲ってバカ笑いしてたら、里奈ちゃんは男子達に、こう言われたんだろ?」


カイトさんは里奈と恵理香をジロリと睨んだ。二人はびくりと体を震わせる。


「面白そうだから、火をつけて殺してみろよ…? ってな」


「…………」
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