憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ごめんな……」
そう一言だけ呟き、指で空中を切るような動きをした。
すると、黒い雲は真っ二つに引き裂かれ、最後に「にゃあ……」と子猫のような鳴き声を残し、消えてしまった。
「ぐぇっ…!!」
里奈は意識を取り戻し「げほっ、げほっ!!」と咳き込みながら起き上がった。
「里奈っ!!」
恵理香は里奈に近づく。
「私、一体…」
里奈は辺りを見渡すと、ハッとして袖をまくった。
「ないっ! 傷がなくなってる!」
里奈の腕や首にはさっきの傷が嘘のように消えていた。
「よかったぁ……」
里奈と恵理香は抱き合って喜んだ。
「す、すごい…」
由梨も英美も、それにあたしも目の前で行われたことに驚きを隠せなかった。
最初は怪しいとか思ったけれど……今の徐霊を見て、カイトさんの力を信じざるおえなかった。
「さて、これで一丁あがり……」
そう言い、カイトさんはあたしの方を向く。
「……と、言いたいところだけど、今度はまた、とんでもねぇ化け物を連れてきてくれたな…」