憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ねぇ、憑霊の体が四ヶ所ないってことは、もしかして憑霊ゲームも四日間続くの? それを返す度に憑霊の体がもとに戻ってくとか」
ふと思い、あたしは恭也に言った。
「そうそう! 冴えてるな七海!
噂だと四日間ゲームに勝つと憑霊は完全に消滅して二度と現れなくなるらしいぜ。一回でも負けるとその時点でアウトだけど」
「へぇ、それきついね。
……てかそもそもさ。あたしらの体を奪おうとするとか、憑霊って何者なのよ? もしかして洋画に出てくる悪魔みたいな?」
昔見た悪魔払いの映画を思い出しながらあたしは恭也に言った。
「さぁ? 憑霊の正体までは姉ちゃんに聞いてないなぁ。
でも憑“霊”って言うからにはタチの悪い悪霊とかじゃないかな? 前にじいちゃん言ってたぜ、狐の霊とかって人の体に憑依することがあるって」
恭也はふざけて手で頭に耳を作り「ほら、お稲荷様!」と狐の鳴き真似をした。
「もう、幼稚園のお遊戯かよ!」とあたしは笑いつつ、
「まぁ、どっちにしても誰かに体を奪われちゃうのは嫌だよね。それってほとんど……“死ぬ”ってことだろうし」
と言った。おもむろにコーヒーを一口飲む。死なんて単語を口走ったせいか、不気味なほど苦い味がした。なんか嫌だな。話題変えよう。そう思ったとき、
「あっ、そうだ! 憑霊ゲームにはもうひとつヤバめのルールがあってさ」
恭也が急に思い出したように言った。
「えっ、まだなんかあるの?」
あたしが聞くと、恭也はニヤリと笑った。
「憑霊ゲームの夢を見ている間、現実世界では───────────」