憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
んー、やっぱりちょっと難しいかも。
そう思い、あたしが由梨に「えっと、つまりどういうこと?」と聞くと、
「……要するに、霊は魂しかないから人間の肉体を奪って生き返ろうとするけど、人間には色々なバリアがあって、そう簡単には手出しができないってことじゃないかしら?」
「な、なるほど」
あたしより少し(?)頭の良い由梨は、要約して教えてくれた。
「人間のバリアを突破するにはかなり強い力がいる。まして一時的でなく完全に主導権を奪うとなると、さっきの猫ぐらいの力じゃ到底ムリだ。せいぜいできて、肉体を内側から破壊するまでだな」
カイトさんが言った。
肉体を破壊するって? 里奈にあったあの痣がそれだよね。いや、十分すごいと思うけど。
「じゃあ七海さんも、死んだ人の霊の魂に自分の器を取られそうになってるってことなんすか? その霊が生き返るために…」
英美が聞くと、
「そう言うことになるな。……すでにそいつの魂は七海ちゃんの肉体のかなり深いところに潜伏している。また車で例えれば、鍵をこじ開けて、あとはハンドルを奪い取れば完全に車をジャックできるって状態だな」
とカイトさんはガムを噛みながら答えた。
「そのハンドルを奪うプロセスが、憑霊ゲームなのね…」
由梨が言うと、カイトさんは「幾分異例だが、俺はそういう解釈だな」とうなずいた。
「……じゃあ一体、あたしの体にいる霊って、何者なんですか…?」
あたしは恐る恐るカイトさんに聞いた。するとカイトさんはおもむろに立ち上がり、
「……伝わってくる思念からして、七海ちゃんと無関係な人間じゃないことはたしかだ。
……でもそれ以上のことを知るには、もっと深く七海ちゃんを覗いてみるしかないな」
そう言い、にやりと笑った。