憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

☆☆☆

カイトさんとあたしは手を繋いで椅子に座り向かい合った。


繋いだ手には難しい漢字がびっしりと書かれた長いテープのようなお札がグルグル巻きにされている。


「これから七海ちゃんの器の中に侵入して、直接、中にいる憑霊の魂と接触する。……そうすれば憑霊についてもっと情報を引き出すことができるはずだ」


カイトさんが言った。


「でも、さっき人間のバリアを突破するのはかなり難しいって言ってませんでしたっけ?」


由梨が聞く。


「ま、普通はな。でも俺は天才だから。人間のくせに簡単にそれができちゃうわけ」


そう言い、カイトさんは自信たっぷりのどや顔で微笑んだ。


「危なくないんですかね? 七海さん…」


英美が心配そうに言う。


「……もちろんリスクはある。だから一応、保険はかけたつもりだ」


カイトさんは繋いでいた手を上げた。


「七海ちゃん。俺が中に侵入している間、絶対にこの手を離すなよ」


「もし離したら、どうなるんですか?」


あたしが恐る恐る言う。


「……そうはならねぇよ。危なくなったら、すぐに中止する」


カイトさんはそう言い、今度は英美と由梨の方を見た。


「二人は俺の後ろに」


「は、はい」


言われた通り、由梨と英美はカイトさんの後ろに下がった。


「何があってもそこを動くなよ。特に七海ちゃんには絶対に触るな」


そう忠告して、カイトさんは繋いでない腕をバキッと、鳴らした。


「準備はいいか?」


カイトさんの問いかけにあたしは息を飲み「はい、お願いします」とうなずいた。


「いくぞ…」


グチャッ……!!
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