憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
凄まじい吐き気があたしを襲う。
チクチクとした針のようなものが大量に胃の中からこみあげてくる。
「うっ…!!」
すぐにそれは口の中にまで達した。あたしは「うぐぇ…!!」と声を上げ、たまらずそれを口の外に吐き出した。すると、
「……っ…!!」
あたしの口から真っ黒な長い髪の毛が飛び出したのだ。その髪は喉の奥から続き、軟体動物の足のように空中を動きまわる。
「……うぐ、あ、あぐぁ………」
髪はどんどんあたしの胃の中から飛び出してくる。そしてカイトさんの腕にからみつき、上へと伝っていった。
「…………」
それでもカイトさんは動揺を見せなかった。あたしの中にいる憑霊の魂を調べているみたいで、瞳孔を開き、真剣な表情であたしの方を凝視する。
……大丈夫だ。いざとなったらカイトさんがいる。
そう言い聞かせ、あたしはこの状況にパニックにならないように自分を落ち着かせた。
すでに髪はあたしが口をいっぱいに開けるほど束が太くなっていた。苦しさのあまり、目から涙が流れる。
やがて髪はカイトさんの首に達した。ぐるぐると首にからみつき、徐々に締め出したとき、
「……限界だな」
カイトさんは腕をあたしの頭からひき抜いた。それと同時に髪は一瞬で消えてしまった。
「うっ……」
その瞬間、あたしはクラっとして床に倒れそうになった。
「七海(さん)!!」
英美と由梨があたしの元に駆け寄り体を支える。