憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
恭子さんが言うと、英美があたしに「度胸ありますね、恭子さんって。オレなら絶対、行かないっす」と耳打ちした。あたしは「黙れ」とだけ答えた。
「家の鍵はあいていてね。悪いと思ったけれど、勝手に家の中に入ったわ。二階に上がって、彼女の部屋まで行くと、部屋の扉が開いていたの。中からは、誰かが一人で話す声が聞こえて……のぞいてみると、ベッドにマーシャ人形を大事そうに抱えた彼女が座っていたわ…」
何かを思い出したのか、恭子さんは怯えた表情を浮かべ、下を向いた。長い沈黙が続く。
「それで、どうなったんですか?」
あたしが恐る恐る口火を切った。恭子さんは顔を上げ、また話し出した。
「私を見るなり、彼女はこう言ったわ。
『マーシャはね。パパとママが私のために買ってきてくれたんだよ。……あいつは、生まれて来れなかった私のお下がりを使っていただけなんだから』
って、笑いながらね……」
「…っ………!!」
身がすくむ思いがした。あたしは唇を震わせ、
「……てことは、その先輩と入れ替わったのは、生まれる前に死んだ、その子のお姉さんだったってことですか…?」