憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
由梨の言葉に、頭にカッと血が昇った。あたしは肩から由梨の手を払う。
「……そんなことない!! あたしには分かるんだよ!! お母さんに嫌われてることくらい!!」
振り返り、あたしは声を荒げた。由梨にここまで怒鳴ったのは初めてだった。
「七海…?」
由梨と英美は目を丸くした。そんな二人にあたしは拳をぎゅっと握り、
「あたしの父親はお母さんを犯したの…!! そうやってお母さんに望まれずに生まれた子供が、あたしなんだから…!!」
思わず、そのことを口にしてしまった。
「えっ、今、なんて…?」
あたしの言葉に、二人は視線をさまよせ、こめかみに銃をあてられたような動揺を見せた。
あたしはハッと我に帰り、顔を伏せる。しまったという気持ちで、血が一気に体から抜けた。
「ごめん。つい取り乱した。今のは忘れて…」
話す必要はなかった。こんな話。なんで二人にしちゃったんだろう…?
「本当なの…? それ…」
由梨が震えた声で言う。
「……うん。お母さんのマネージャーが話してるのを聞いたの。ちょうどあたしが頭を怪我したときに…」
その言葉に由梨は真っ青な顔をした。
「……じゃあ、七海がモデルを辞めたのも、本当は頭の怪我だけが原因じゃなくて…?」
由梨の言葉にあたしは小さくうなずいた。