憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「……皮肉なものだよね。元々、お互い望まれずにできた子供が……今度はどちらかが生きるために、ひとつの体を奪い合うんだから…」
そう言い、あたしは二人から顔を背けた。
「でも七海は、無事に生まれて来れたじゃない…? 憑霊とは違うわ…」
「そうっすよ。七海さんとして生きる権利があるのは……七海さんだけっす!」
あたしを励ますように二人は声をかける。その気持ちが嬉しい反面、どこか二人を遠ざけたい気持ちになった。
「……ごめん。そろそろ時間だ。あたし、カイトさんの事務所に行くから」
そう言い残し、あたしは二人とは違う道へ行った。
「七海っ!」
少しして由梨が後ろから声をかけた。あたしは振り返らず、立ち止まる。
「絶対に、負けないでよ」
由梨の声が、ひんやりとした闇夜の中に響く。
「…………うん」
あたしは小さく返事をし、走り出した。