憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「うわっ!!!!」
チェンソーを手に、突進する英美。あたしは紙一重でかわす。
「ちっ、すばしっこいっすね!!」
苛立った英美の声。さらにもう一度、チェンソーを振り上げる。
「やめてよ英美っ!! なんでこんなこと!!?」
懸命に呼び掛ける。
「うるさいっす!! オレは七海さんにずっと憧れてたきた!! それを裏切ったのは……あんたの方っす!!」
チェンソーの刃先が胸の辺りをかすめる。
「うぐっ!!」
出血し、鋭い痛みが走る。
「裏切った…? あたしが英美を…?」
あたしは息を切らせ聞く。
「オレはモデルをやっていた七海さんに……オレにとっての理想だった七海さんに憧れて凪瀬まで追って来たんす。
……それなのに七海さんは、大事な顔に傷をつけてオレの理想をメチャクチャにした…!!」
英美の言葉にギュッと心が痛んだ。ずっと英美に対して恐れてきた言葉が、あたしの胸を突き刺す。
「英美……お願い、止めて」
少しずつ距離を詰める英美に、あたしは絞り出すように言う。
「モデルを辞めた七海さんは……もうあたしが憧れた樋口七海じゃないんす。
……ずっと憧れ続けたあんた自身が……オレから憧れを奪ったんよ!!」
英美のチェンソーがあたしの首を狙う。