憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

「……っ!!」


ギリギリで反射し、首を右に反らす。刃先は喉を外れ、首の左側をかすめる。


「痛゛っ…!!」


鋭く、焼けるような痛みが走る。直後に回転した刃は、あたしの後ろ髪を巻き込んだ。


「う゛がぁあっっっ…!!!!」


頭皮が引き剥がされるような痛みに耐え、あたしはとっさに巻き込まれた髪を手で引き千切った。そして逃げるように、英美から距離をとる。


「七海~っ!! みてみて!」


由梨の声に、ドクドクと血の流れる首の傷を押さえ、あたしはジェットコースターの乗り場に視線を向ける。


すると、由梨はジェットコースターに憑霊の左足を乗せ、


「しゅっぱーつ!」


とスイッチを押し、ジェットコースターを発車させる。


「嘘っ、そんな…!!」


左足を乗せたジェットコースターはどんどん遠ざかり、そのまま広い園内をめぐっていく。


「……ふふっ。このジェットコースター、一度動かすと止まらないらしいのよ。だいぶ古いし、壊れてるのかしらね?」


いつもの調子で由梨が言い、チェンソーを手にした。そのままあたしにゆっくりと歩み寄る。


「……なんで、由梨……親友でしょ…?」


あたしは後退りしながら言う。


「……親友? ……止めてよ。穢らわしい忌み子のくせに…」


そう言い、由梨はチェンソーを構える。
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