憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「さぁ……もう終わりにしましょうよ!!!!」
英美と由梨はチェンソーを振りかざし、あたしに飛びかかる。
「くっ…!!」
折れかかった心をなんとか奮い立たせ、あたしは走り出す。
「ははっ、鬼ごっこすか!? 上等っす!!」
二人は狂ったように笑い、あたしを追いかける。
「はぁ、はぁ…!!」
ジェットコースターの乗り場を過ぎ、ひとりでに回転する空中ブランコの近くを通る。
後ろを振り返ると、二人との距離はかなり離れていた。
英美はともかく、由梨はそもそも運動が苦手だ。足の速さなら、着ぐるみを着てチェンソーを持った二人よりも身軽なあたしに分があった。
そのまま距離を離し、二人が見えなくなるまで走ると、近くに赤くて大きなテントのような建物があった。
そこの看板には『Welcome to happy Circus!!』と書いてある。英語の意味はいまいち分からない。
「七海さん~!!」
「七海ぃ~、どこなの~!?」
あたしを探す二人の声が聞こえる。
……無闇に逃げれば、最悪、憑霊と鉢合わせる危険もある。
ここはテントに隠れて二人をやり過ごそう。
そう思い、あたしはテントの中に逃げた。