憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
当然、うんとスピードが落ちる場所じゃないと不可能だ。ベストなのは、コースが上りに入り、一気に落ちる直前。普通に乗ったらある意味一番怖い、落下をじらされるポイントだ。
「でもさすがに、あの高さをよじ上るのは無理だなぁ…」
ジェットコースターのコースは鉄柱に支えられ、20mくらいの高さにあった。まして上り坂の頂上になると、その高さは倍以上はある。
……そうなると、あとはジェットコースターの乗り場はどうだろうか?
スタートとゴールではジェットコースターはほとんどスピードが出ない。
前に見たテレビの受け売りだけど、ほとんどのジェットコースターは最初にコースの中で一番高い坂道を上らせ、あとは落下した運動エネルギーを利用してコースを巡回しているらしい。
これが正しければ、例え止まることのないジェットコースターでも、スタートとゴールの位置では必ずスピードが落ちる。
狙うなら、ここしかない!
そう思い、あたしはジェットコースターの乗り場まで走る。
「そういえば、今回のゲームが始まってから、憑霊が一度も姿を見せてないな…」
ゲームが始まる前にカイトさんも言ってたけど、カイトさんが徐霊をしていることで、憑霊が動けずにいるのかもしれない。
そう思えば、今回のゲームは決して悪くない。憑霊の体の隠し場所も分かっているし、むしろあたしに有利な条件がそろっている。
そんなことを思いながら走っていると、ジェットコースターの乗り場が見えてきた。
そのときあたしの耳に、
「七海さん、どこいったんすかねぇ~?」
「ほんと、うまく逃げたものね」
と例の二人の声が聞こえてきた。