憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ん? なんすか今の声?」
英美はあたしの声に気づき、振り返る。
あたしは男の生首と目を合わせたまま、凍りついたように固まる。
「どうしたの英美? 何かあったの?」
由梨の問いかけに、
「……いや、たぶん、気のせいっす」
と英美は答え、また歩き出した。
二人はそのままジェットコースターの乗り場に行き、見えなくなった。
あたしは胸を撫で下ろし「はぁー、、」と息を吐いた。それからしばらく気持ちが落ち着くのを待ち、
「……さて、これからどうしようか…」
改めて作戦を考え直した。
憑霊の左足を取るには、ジェットコースターの乗り場に行くしかない。だけどそこには、英美と由梨が待ち伏せている。
「どうにかして、二人を乗り場から離さないと。せめて左足を手に入れて、勝ちを宣言するだけの時間がほしい。でも、どうやって?」
あれこれと模索するあたしの頭に、ふとあのスマホのことが過った。
「そうだ!! これを使えば!!」
ひとつの案が浮かんだ。それがうまくいくかは分からないけれど、試す価値はありそうだ。
「じゃあまず、あのアプリを利用して…」
作戦の下準備に、あたしはポケットからスマホを取り出し、ある簡単な仕掛けをした。