憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~

……ここから先は、完全にあたしの想像だ。


なぜならあたしは、それから二人が屋台で何をしたか見ることはなかったからだ。つまりあたしは、最初から屋台にはいなかったのだ。


……だけど想像するに、英美と由梨は弱々しいあたしの命乞いに勝ちを確信した。あたしがそこにいたと信じていたからだ。


しかし、由梨が切りつけたところにあたしの姿はなかった。


戸惑う二人があたふたしながら見つけたのは、一台のスマートフォン。


それはタイマー式であたしが録音しておいた“命乞い”の音声を、大音量で流す設定になっていた。


この時、二人はまんまとはめられたことに気づいた。そして当然のようにぶちギレて……


「七海ぃぃぃいいい!!!!!!」


あっ! 案の定、由梨のどなり声が!


その声を聞いたとき、あたしはすでにジェットコースターの乗り場で憑霊の左足が来るのを待っていた。


本物のあたしはジェットコースターの乗り場のすぐ近くにある茂みに隠れ、二人が屋台に行ったのを確認し、乗り場の中に入ったのだ。
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