憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
屋台からここまで、走っても40秒はかかる。いや、着ぐるみを着た二人ならもっと時間を要するかもしれない。
ジェットコースターはすでに最後の直線に入り、スピードを落としていた。この分ならあと20秒もしないうちにあたしのところに来る。
二人が来る前に、余裕で左足を回収して勝ちを宣言できる。
「勝った。三日目もあたしの勝ちだ!!」
あたしは半ばそう思った。
……しかし、そのとき、
「七海…」
誰かが、後ろからあたしに声をかけた。あたしはビクッと体を震わせ、振り返ると、
「よぉ、久しぶり…」
制服姿に、茶髪で、細身でありながら筋肉質な体つきの男が、あたしの後ろに立っていたのだ。
その男を見て、あたしにドクッと、心臓が飛び出すような衝撃が走った。
「きょ、恭也…?」
紛れもなく……それは恋人の恭也の姿だった。
恭也が憑霊ゲームの初日で失踪してから、体感では、もう何年も会っていない気さえしていた。