憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「恭也だよね? ねぇ?」
顔を真っ赤にし、あたしは息を乱しながら何度も問いかける。
あたしの胸は、恭也との再会を果たした嬉しさで張り裂けそうだった。初恋をした時のように、初々しく、ドキドキと鼓動が高鳴っていることが自分でも分かった。
同時にあたしは驚いてもいたし、ひどく混乱していた。
無防備に、あたしは恭也の藍色のジャケットに飛びつく。
すると恭也は、
「七海、見ろよこの指……」
と言い、左手をかざす。
その手を見て、あたしはゾッとし、思わず「ひどい…」と声をもらした。
……恭也の左手には、薬指がなかったのだ。
指は根本から切断され、断面は血で赤黒く染まり、白い骨が肉の隙間からわずかに飛び出していた。
薬指の周辺の皮膚は、赤く腫れたように紅潮している。
見ているのも辛くて、あたしは目を反らした。
すると突然、恭也はその手で、怯えるあたしの右頬に触れた。そして安心させるように優しげな瞳であたしの目を見つめると、今度は目を閉じ、あたしの唇にそっと唇を重ねた。