憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「んっ…」
柔らかい、マシュマロのような感触がする。全身の力が眠りに落ちるように抜け、あたしは恭也に体を預ける。そして、恭也の大きな背中に手を回した。
ドキドキと心臓が高鳴る、心地の良い生のリズムに包まれる。服越しに伝わる肉体の動きと、唇の濡れた感触が、恭也への気持ちをさらに高ぶらせる。
「恭也ぁ、恭也……」
そうして何度も唇を重ねると、付き合いたての頃にタイムスリップしたような、新鮮でいて、不思議な気分に浸っていく。
そんな甘美なひとときに溺れるあたしの横を……ガタガタガタッ!! とジェットコースターが通りすぎていくのが見えた。
「……あっ……」
……そこには憑霊の左足が乗っていた。
とっさに視線を恭也に移すと、恭也の右手の袖から黒い鉄の警棒が滑り落ちるのが見えた。恭也はキスしたまま、その警棒をギュッと握りしめる。
それを見て、あたしは冷水をかけられたように我に返りハッとした。恭也との甘い幻想の世界から、再び悪夢の中へと意識が戻ったのだ。
あたしは恭也から静かに唇を離すと、
「……恭也、その指……どうしたの?」
と自分でも訳のわからない質問をしていた。
すると優しかった恭也の表情が、一瞬で歪み……