憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ふふっ、いいっすねぇ。その顔……ゾクゾクするっす。実のところ、オレは由梨さんみたいに小難しいことは一切、考えてないんすよ。
ただオレの望みは、憧れだった偶像(アイドル)は自分の手で……」
と言いながら、英美はチェンソーを手にあたしの方に走り、
「始末をつけたいってだけなんすよ!!!!!!!!!!」
と叫んだ。
もうダメかも…!!
覚悟を決め、あたしはグッと歯を食いしばる。
すると英美は着ぐるみで下がよく見えなかったのか、
「うおおおっと!!?」とあたしの脱げた靴を踏んでつまずく。
「ちょっ、英美…?」
つまずいた英美の持つチェンソーはちょうど近くにいた由梨に刃を向ける。
その刃はグルグルと回転したまま、由梨の着ぐるみの口の中に吸い込まれる。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!???」
チェンソーは由梨の着ぐるみの中で暴れまわる。着ぐるみの節々から血が一気に吹き出し、由梨は着ぐるみの中でミキサーにかけられたように甲高い悲鳴を上げながらもがき苦しむ。
それから10秒も経たないうちに、由梨の着ぐるみは魂が抜けたように地面に倒れた。着ぐるみの口からはバケツをひっくり返したような血がこぼれ、その血に混じりチェンソーの刃と、なぜか由梨の左手の先が飛び出した。