憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「あ~あ、由梨さん死んじゃった~」
当事者の英美は悪びれる様子もなく言った。
「あ……ああ……」
あたしは目の前で起きた由梨の残酷すぎる死に、恐怖を通り越して放心状態となっていた。
頭を落とし、一筋の涙が流れる。
そんなあたしの耳に、
「何やってんのよ。あんた達…」
どこかで聞き覚えのある澄んだ女の人の声が聞こえた。
「静海さん、来たんですね」
あたしの右腕をつかんでいた村上さんが言った。その声に、あたしは弱々しく頭を上げる。
「……………おか……あさん?」
英美と恭也が道を空け、あたしの目の前にお母さんが……樋口静海が現れた。
悪夢の中で会うのは二回目だった。
だけどさっきの男に襲われていた時のお母さんとは違い、少し年を取っていたし、髪もショートカットに切ってあった。
つまり目の前の樋口静海は……あたしがよく知った、今のお母さんの姿だった。
「…………」
お母さんは無言のまま、クマのある沈んだ目であたしを見つめる。
そんなお母さんにあたしは……
「お願い……お母さん…
あたしを助けて……お願い……」
と怯えきった声で哀願した。
その言葉に無表情を貫いていたお母さんは表情を歪めた。そして口を開くと、