憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「そんな目で私を見ないで……そんな声で……私を“お母さん”なんて呼ばないでよ!!」
と感情をぶちまけるように叫んだ。
「……っ!!」
いつにないお母さんの様子にあたしは呆気にとられた。
「七海が生まれてきたせいで、私の人生は何もかも狂ったの!! 私の夢も、体も、家族も、恋愛も……全部……七海が奪ったのよ!!!!」
狂ったように頭をかきむしり、お母さんは血走った目で訴える。
胸がツンと痛んだ。どうしようもなく、瞼に涙が溢れてくる。
「そんなの……あたしは知らないよ……あたしには関係ない……あたしがあたしを生んで欲しいなんて……頼んだ覚えないよ…」
涙を流しながら弱々しい声で言った。
「そうよ。結局は私が決めたことよ。七海を生むって。……でも今思えば、愚かな選択だったわ。私の人生で、間違いなく一番の汚点ね……」
鋭く睨むような視線をぶつけ、お母さんが言う。
「じゃあ、なんでそのときはあたしを…?」
涙で嗚咽しながら、あたしが問いかける。するとお母さんは頭をかしげ、
「……別に。ただ自分が堕ろした命に苦しめられたくなかっただけよ。………それに少しは……役に立つと思ったの。私の娘なんだから、売り出せば金になるはずだって。だけど……」
と言いながら、お母さんは由梨の死体の前に行き、着ぐるみの口からチェンソーを取り出した。
「顔に傷をつけた七海は……商品としても無価値になったわ。だからもう七海は私にとって、不要でしかないのよ…」
そう言い、お母さんはチェンソーを起動させる。その刃はギュィィィン!! と恐ろしい音を立て回りだした。