憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
「ふふっ、そうこなくちゃ!」
お母さんを見て笑う英美。
「まずは右腕……お願いしますよ?」
恭也は今まで見たことがないほど恐ろしい笑みを浮かべて言う。
その時、ちょうどあたし達の上の方にあるコースを、止まることのないジェットコースターが通過していった。
「…………だったら」
そう口にするあたしが、全身を震わせながらも、妙に頭が冷静でいることを感じた。
極限まで追い詰められ、すでに憑霊ゲームに勝つことはおろか、目の前に迫る想像を絶するような苦痛からも、死からも逃れることはできない。
……そんな諦めを潔く受け入れてしまったからだろうか?
口角がヒクヒクと上にあがり、なんだか自分のことが、バカに可笑しくさえ思えてきた。
「最初から……あたしなんか生まないでよ……」
情けなく、裏返った声であたしは言った。
「ええ。そうよ。そうするべきだったわ…」
お母さんはニヤッと笑い、耳を塞ぎたくなるような音で刃が回転するチェンソーを両手で持ち、振り上げる。
そして一瞬にして笑顔を消し、下水道に詰まった汚物を見下ろすような視線をあたしに向けると、
「あんたなんか、生まれてこなきゃよかったのよ…」
と言い捨て、チェンソーをあたしの右手の肩の辺りをめがけて振り下ろした。
「…………っ!!!!!」
回転する刃はあたしの制服を切り裂く。そして瞬く間に肩の肉にまで達すると……