憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
後ろから見世物を見るような……みんなの残酷な笑いがこだまする。
あたしは胸を引き裂かれるような悔しさと、神経に針を刺すような痛みに耐え、涙とよだれを流し、憑霊から逃れるために必死で這いつくばった。
あたしが這った跡には、道しるべのように血がのびた。
……思っていたよりも、出血がひどい。
ほんの10mくらい這って、とうとう体に力が入らなくなり、あたしは仰向けに倒れ、動かなくなってしまった。
氷で満ちた冷水の中にいるような寒さを感じ、全身の体から、魂が抜けていく感覚がした。
それでもあたしは微かに口角を上げ、
「……もういい。どうせ逃げても、捕まるだけ…」
と呟き、空を見た。
皮肉なことに、月と星は綺麗に輝いていた。こんな綺麗な夜空を見るのはいつ以来だろう?
20mくらい上方には、ジェットコースターのレールがある。今となってはどうでもいいけれど、あのレールとつながったどこかのコースを、憑霊の左足を乗せたジェットコースターがまだめぐっているのだろう……。
そう思うあたしの視界に、なぜか赤いフィルターがかかり、いよいよ自分に迫る死を感じた。
嫌でも研ぎ澄まされた聴覚が、憑霊の足音が近づくのをとらえる。
その時、突然、足音をかき消すほど大きな、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギィィィィィィ……!!!! と、金属が軋む音がした。