憑き夜の悪夢 ~奪い合うナナミの体~
それは人間の左足だった。
直感でそれが憑霊のものだと言うことが分かった。
「……ううっ…………」
ほぼ無意識に、あたしはそれに手を伸ばす。そして辛うじて声を出し、
「左足返す、あたしの勝ち…」
……と宣言した。
同時に、遊園地のきらびやかだった照明がパッと消えた。
「…………」
完全に廃墟と化した遊園地の中、あたしは死んだように仰向けに倒れた。血と錆びた鉄の臭い。その視界の端に、憑霊が姿を現す。
「…………」
憑霊の体には両足があり、首なしであることを除けば、ほとんど普通の“人間”の体をしていた。
憑霊はゆっくりとあたしに近づき、見下ろした。
するとあたしの視界は真っ暗に変わり、意識が眠りに落ちるように消えていった。
こうして、三日目の悪夢が終わった…。